皆さんが「兜」と聞いて思い浮かべるのは、五月人形などでおなじみの写真のようなデザインではないでしょうか?
それに対して、「変わり兜」は、動植物や兜以外のかぶりものなどをかたどった兜。その名の通りちょっと変わった形をしています。
戦国時代の少し前(1 6 世紀・室町時代後半)頃から、鉄の上にウルシで革や紙を貼り重ね、さまざまな形に仕立てることが流行し始めました。
そのデザインは、身近なものから現代の私たちにはちょっと意外なモチーフまで、実に様々なものが存在します。
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理由 其の一
「戦場で目立ちたい」
戦場では大勢が入り乱れて戦います。その中で個人を識別し、手柄を目立たせ、認めてもらうため、奇抜なデザインを競いました。
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理由 其の二
「あやかりたい」
生きるか死ぬかの戦い。勇気をふるいおこすために、武将たちは、神仏や大自然の力を借りようとしました。
[例]ウサギの素早さと月の神さま(=戦いの神さま)の力を借りて生き抜くぜ! -
理由 其の三
「余裕をみせたい」
変わり兜の中には、驚かせるようなデザイン、笑いを誘うようなデザインもあります。きっとそれは自分が死を恐れていないという余裕を示すため。 敵に対して、そして味方に対して、もしかしたら自分に言い聞かせるためにも…
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蝶形兜
ちょうなりのかぶと チョウの「よみがえり」にあやかる頭を下にして、羽を広げてとまったチョウに見えませんか?見えますよね。毛虫からサナギ、そしてチョウへ華麗な変身をとげるチョウには、「よみがえり」「不死」のイメージがもたれていました。
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柏葉形兜
かしわばなりのかぶと ご先祖様の幸運にあやかるかしわもちにも付いている、あの葉っぱが3枚デザインされています。山内家の先祖に、背中に指す旗印を失い、代わりに柏の枝を指して戦った人がいました。激戦を勝ち抜いて気がついたら、枝に3枚の葉っぱが残っていたそうです。
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兎耳形兜
うさぎみみなりのかぶと 素早く進み、退かぬ兎は、大きな耳で素早く情報を集め、走るのも速く、そして、後ろ向きには走れない動物だと思われていました。また、月の神様(=戦いの神様)のお使いという信仰もありました。
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板屋貝形兜
いたやがいなりのかぶと 末広がりでおめでたくイタヤガイはホタテ貝の仲間。下から上に向かって広がる形(末広がり)が、将来に向かって発展していくようすをあらわすととらえられ、縁起物として人気がありました。
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笠子形兜
かさこなりのかぶと ジェントルマンか?!兜だってかぶりものなのに、わざわざ兜をほかのかぶりものの形にしたがる人たちは大勢いました。これは、たぶん外国人の帽子をかたどったデザイン。
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南蛮帽子形兜
なんばんぼうしなりのかぶと パリジャンか?!え、大黒様?かぶりもの系その2。ベレー帽をかたどったという説と、大黒様の頭巾なんじゃないかという説があります。
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八角笠形兜
はっかくかさなりのかぶと こっそり「へうげもの」にも登場かぶりもの系その3。笠をかたどったという説が有力なのですが、実は、朝顔の花だとか、富士山だという説もあります。しころ(笠の下の部分)が、金色でさりげなく派手。
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頭巾形兜
ずきんなりのかぶと 呪文?がびっしりかぶりもの系その4。頭巾をかたどった兜。黄色いウルで、天帝の守護を表す文言が全面に書かれています。
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尉頭形兜
じょうかしらなりのかぶと かつらじゃないよ、かぶとだよ尉、つまりおじいさんの頭をあらわした兜。百戦錬磨の老戦士にあやかろうとしたのでしょうか?でも、本当は古くなって毛が抜けただけで、本来、壮年男子を表していた可能性も。いろいろと謎の兜です。
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束髪形兜
そくはつなりのかぶと あたま onあたま andかんむりまず、写真左の兜をかぶります。鉄鉢の上に、なぜか束ね髪が植毛してあります。次に右側の冠をかぶります。さあ出陣だ!